
ニッケルチタン用語集
ニッケルチタンに関する包括的紹介書は、https://www.memry.comよりダウンロードすることが可能です。
本紹介書には冶金学、物性をはじめ、部品加工や品質管理試験など、ニッケルチタンに関する様々な事項を紹介しております。
ニッケルチタンの世界では多くの独特の用語が使用されており、代表的な用語を以下にて解説しております。
尚、ニッケルチタン合金用語の定義に関してましてはASTM F2005 – Standard Terminology for Nickel-Titanium Shape Memory Alloysをご参照下さい。
最終オーステナイト相変態終了温度 (Active Af) - ワイヤ、パイプや半完成部品状態でニッケルチタン合金が示すオーステナイト相変態終了温度を表し、
ASTM F2082で規定する曲げおよび自由回復(BFR)試験方法にて測定される。最終オーステナイト相変態温度は、
インゴットではなく最終形態に近い状態に加工されたニッケルチタンの変態終了を表すため、実機特性を検証するための重要なパラメータである。
オーステナイト - ニッケルチタンが高温時に変態する母相を表し、結晶構造がB2構造になる
オーステナイト相変態終了温度 (Af) - ニッケルチタンは加熱するとマルテンサイト相からオーステナイト相に変態するが、
オーステナイト相変態終了温度はすべてのマルテンサイト相がオーステナイト相に変態しきったた温度を表す。
オーステナイト相ピーク温度 (Ap) - 形状記憶合金を示差走査型カロリメトリー(DSC)で計測した場合、
加熱でマルテンサイト(またはR相)からオーステナイト相に変態する過程で吸熱ピークとして現れる相変態の中間点を示す。
オーステナイト相変態開始温度 (As) - ニッケルチタンが加熱により、マルテンサイト(またはR相)からオーステナイト相への変態が開始する温度を示す。
自由回復 - 形状記憶合金を一旦低温に冷却し変形した後、固定されていない状態で温度を上昇させ形状を回復させる状態。
除荷プラトー力/応力 (LPS) - ニッケルチタンの歪み応力曲線に関する用語で、加重をかけたサンプルを除荷した状態で示す応力と定義される。
ASTM F2516では、6%の歪みが発生する負荷を掛けたあと、歪みが2.5%まで回復した時点で測定された応力と定義されている。
マルテンサイト - ニッケルチタンの低温時の状態でB19'結晶構造をとる。
マルテンサイトデフォメーション温度 (Md) - オーステナイト相(高温状態)の形状記憶合金は負荷を掛けると応力隆起マルテンサイト相変態を起こし変形するが、
温度がさらに高い場合は塑性変形を起こすようになる。応力隆起マルテンサイト変態が発生する上限温度をマルテンサイトデフォメーション温度と呼ぶ。
マルテンサイト相変態終了温度 (Mf) - ニッケルチタンの冷却において、オーステナイト(またはR相)から完全にマルテンサイト相に変態しきった状態を示す。
マルテンサイト相ピーク温度 (Mp) - 形状記憶合金を示差走査型カロリメトリー(DSC)で計測した場合、冷却でオーステナイト相(またはR相)
からマルテンサイト相に変態する過程で、吸熱ピークとして現れる相変態の中間点を示す。
マルテンサイト相変態開始温度 (Ms) - ニッケルチタンの冷却において、オーステナイト相(またはR相)からマルテンサイト相へ変態が開始する温度を示す。
擬似弾性 - 超弾性の別名。詳細は「超弾性」の項目を参照のこと。
R相 - オーステナイトとマルテンサイト相の間に発生する中間相。R相は、特定の条件で処理されたニッケルチタンで発生する。R相は菱面体晶系の結晶構造を持つ。
R相変態終了温度 (Rf) - R相変態を起こすニッケルチタン合金において、冷却サイクルでオーステナイト相からR相への変態が終了する温度。
R相ピーク温度 (Rp) - R相変態を起こすニッケルチタン合金をDSC測定した場合に、冷却サイクルでR相領域において吸熱のピークが発生する温度。
R相変態開始温度 (Rs) - R相が発生するニッケルチタン合金で、冷却サイクルにおいてオーステナイトからR相に相変態が開始する温度。
R'相変態完了温度 (R'f) - R相が発生するニッケルチタン合金で、加熱サイクルにおいてマルテンサイト相からR相への変態が完了する温度。
R'相ピーク温度 (R'p) - R相変態を起こすニッケルチタン合金をDSC測定した場合に、加熱サイクルでR相領域において吸熱のピークが発生する温度。
R'相変態開始温度 (R's) - R相が発生するニッケルチタン合金で、加熱サイクルにおいてマルテンサイト相からR相への相変態が開始する温度。
残留応力(Elr) - 応力を掛けた後に完全にもとに戻らない歪み量。ASTM F2516においては、サンプルを6%歪ませるの負荷を実施したあと、
応力が7MPa未満まで除荷した時点でもとの長さに戻らない比率として定義されている
超弾性 - ニッケルチタン形状記憶合金において、Af温度以上でMd以下の領域で、除荷すると記憶した形状を自己回復する状態を示す。
降伏ひずみ量 (Elu) - サンプルが負荷により局部収縮、破断または双方が発生する直前の最大応力においてのひずみ量。詳細はASTM F2516参照のこと。
負荷プラトー力/応力 (UPS) - サンプルの負荷サイクルにおいて、サンプルひずみ量が3%到達した時点での応力値。詳細はASTM F2516参照のこと。